次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
自分でもこじらせてる自覚はある。
でも15歳の時に言われたあの言葉たちはまだ心に突き刺さったまんまなんだ。

「ま、文香がそう思ってる限り仕方ないね」

これ以上はいつも通りの堂々巡りだと、湊はばっさりと切り捨てた。



「で?文香を振り回してるんだから、殿は相変わらずご健勝?」

お互いに日替わりランチを注文した後聞いてきた湊の表情は、面白がっているのを隠すつもりもないらしい。

「殿」とは言うまでもなく、駿介の事だ。

学生の時から年齢に不相応な貫禄を持ち、先生さえ一目置いていた彼についたあだ名は「殿」。「王子」でないのはもちろん、あの俺様な態度と言葉使いがゆえだ。
生っ粋の御曹司なクセに何故だかぞんざいな口調で、それさえも駿介の魅力の一つになっているのだからタチが悪い。

私の高校の同級生だった湊はもちろん、駿介の伝説を知っている。

「もちろん!迷惑なくらいにご健勝よ。今日も朝イチに殿様っぷりを発揮してた」
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