次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「厳しすぎない?」

一族とランドホテルからも出禁になったら睦子叔母さんは抜け殻になってしまうんじゃないだろうか。その二つと敏彦さんが生き甲斐だったのに。

「甘いな。自分のされた事考えろよ」

「でも、実際に被害はなかったわけだし‥‥」

「それは俺が助けたからだろうが!昨夜、俺が行かなかったらどうなってたか考えろよ」

「ーーはい」

それを言われると反論出来ない。でも、妙な罪悪感が残るのも事実で。困った顔で駿介を見上げたら、苦笑で返された。

「大丈夫、文香が気に病むことはない。睦子叔母はもちろん、敏彦だってしたたかだからな。これで意気消沈はしないさ。むしろ、すぐにでも復活する機会を探し出してくるはずだ」

「それはそれで恐いかも‥‥」

「だな。でも文香は俺が守るから。安心してろ」

蕩けそうな甘い声と表情に急いで視線を逸らすけど、赤面するのは止められない。膝の上に置いた自分の両手をぐっと握って耐えている私を、駿介が笑う。
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