次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「今すぐ路肩に停めて抱き締めたい可愛さだけど、残念ながら時間切れだ。降りるぞ」

促されて、慌てて視線を上げた。いつの間にか車はどこかの立体駐車場に停まっている。

「あの、ここ、どこ?」

「それは着いてのお楽しみ。ほら、行くぞ」

助手席のドアを開けた駿介は、戸惑う私の手を強く握って歩き出す。

「待って!ね、ここって‥‥‥あれ?」

しばらく歩いたら、よく知っている場所だと分かった。國井家御用達のデパート。いつも家に来てた外商さんのお店だ。

理解した私を見た駿介はにやりと笑って歩くスピードを上げる。コンパスが違うから、私は手を引っ張られて小走りだ。

「國井様!お待ちしておりました」

ずんずんと迷いなく歩いて行った先はデパートの外商サロン。私もお祖母様のお供で何度か来たことがある場所だ。そして出迎えてくれるのも、馴染みの外商さん。ピアノの発表会のドレスを選んだ時にも来てくれた、國井家の担当さんだ。


< 203 / 217 >

この作品をシェア

pagetop