次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
駿介への想いを拗らせて持て余している私に誰か紹介なんて、ありがた迷惑でしかない。


どうせなら先に駿介に紹介して、私の気持ちの整理を助けてくれたら良いんだ!


随分と勝手な結論を出してから、私は幸恵さんから手を戻した。

「もう大丈夫です。ヤケドにはならなかったみたいですし、ありがとうございます」

そう言ってから幸恵さんを見て、笑顔を作る。

「それと取締役からの紹介のお話はきちんとお断りしてもらえますか?私、今は恋愛も結婚もまったく興味がないんです。
それより常務に紹介された方がいいと思います」

「じゃあ、そう伝えておくわ。でも、そうよね。文香ちゃんならいくらでもチャンスはありそうだし、役員からの紹介なんて正直面倒くさそうだものね」

素直に私の言葉を受け取った幸恵さんがちょっといたずらっ子な笑みを見せてくれたのに微笑んで、常務室にコーヒーを運ぶ。


扉の前に着くまでに平常心になれ、私。
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