次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
駿介と植田社長は多分、プライベートな話をしているんだろう。朗らかな空気が伝わってくる。

コーヒーを机に置いたら、駿介が私にも話を振ってきた。

「文香も是非行きたいよな?」

はいぃ?と問いただしたくのを我慢して目で駿介に問いかけた。話を振るのは構わないが、いきなり訳のわからない話は困る。

「やっぱりそうだよな。2人で伺いますよ。そうだな、折角だし今夜にでも」

私の視線を都合よく解釈して話を進める駿介は、にこやかに約束までしている。

「あの‥‥‥」

たまらず声を上げようとしたのさえ、遮られた。

「ああ、今朝言ってた予定はキャンセルで構わない。どうせ急いだ話でもなかったんだし。それより、折角の凱旋だ。夏希さんの個展は外せないよ」


なるほど。植田社長の1人娘、夏希さんがヨーロッパから帰国して個展を開くのか。ならば当然、そちらが優先される。
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