次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
植田夏希さんは駿介の2つ上、私より7つ上の素敵なお姉さんだ。時々植田社長と一緒に國井の本家に遊びに来ていたし、私にとっては憧れのお姉さんでもある。

さっぱりしていて男前。私には絶対的だった駿介をけちょんけちょんにする夏希さんは、ある意味とても格好良い。

芸術大学を卒業後、「私に日本は狭すぎる」という名言を残して渡欧して約10年。向こうでグラフィックアーティストとして一定の成功をしていると、大介父さんから聞いたことがある。

「夏希さん、日本で個展を開くなんて初めてじゃないですか?」

ようやく話が見えた私は植田社長に話しかけた。

「そうなんだよ。ヨーロッパで自分なりに出来るところまでやりきったらしくてね。これからは日本を拠点に活動すると言ってくれて」

子煩悩な植田社長のことだ、1人娘が遠く海外に離れているのが寂しかったのだろう。ほころぶ笑顔から植田社長の喜びが伝わってくる。

「私も夏希さんの個展に伺うの、とても楽しみです。夏希さんにもずっとお会いしてなかったので」
< 30 / 217 >

この作品をシェア

pagetop