次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
嫌味なくらいにーっこりと笑って答えると、やり込められて不機嫌になった駿介がデスクに座って私から視線を避けた。

「じゃあ、そういう事でよろしく頼む。俺は書類を片付けるから」

つまり出て行けって事だ。

「承知しました。住職への連絡はいかがしましょうか?」

「‥‥そのうち時間を作って行くと伝えといてくれ」

苦いものを口した時ような調子に笑いを堪えて、了解のお辞儀をしてたら退室した。


でも堪え切るのは無理だった。席に着く頃にはクスクスと小さな笑いが出て、向かいの幸恵さんに から不審げな視線をもらってしまう。


座禅は大介父さんの唯一の趣味だ。立場柄、気軽に悩み相談をするのも難しい父さんのリフレッシュ方法でもあるのだろう。
忙しい中でもなんとか時間をやりくりして、信頼出来るご住職のお寺で今もずっと続けている。

それはとても良い事だと思う。賛成だ。‥ただ、その素晴らしさを私達にも伝えたいと、ことあるごとに一緒に行こうと誘ってくるのはやめて欲しい。
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