次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない

そんな三人を眺めながら、私はさっき夏希さんに言われたことを思い出す。


好きって素直に認める気持ち。それはきっと、今の私が一番持っちゃいけないモノだ。


「‥‥か？文香ってば！」

「え？何？」

ぼんやりとしていて何も聞いていなかった。

慌てて意識を戻すと、ちょっと怒った湊が目の前にいた。

「もー、ぼんやりしすぎ。何飲む？って何度も聞いてるのに」

「ごめーん！みんなと一緒でビールで大丈夫だよ」

急いで湊の持っている缶ビールをもらってプルタブを開ける。そのまま一口飲むと、いつもより苦い味が広がった。

「‥‥そうだな。文香ちゃんもかなり拗らせてるみたいだし、最初にちょっと昔話聞いてもらっちゃおうかな」

軽い口調で始まった夏希さんの昔話は、私の心の深い場所に突き刺さる物語だった。