冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「お前の瞳は、もう僕のことを熱い視線で見つめてはくれないのか?」
濡れるのもいとわず片膝をついたグレイスは、片掌で乱暴にフィリーナの顎を掴み上げる。
「もっと深く僕から抜け出せないように、密な男女のまぐわいまで教えておくベきだったかな」
口づけられそうなほどに間近の囁きは、今までそれをどこに隠していたのかと疑うほどおぞましい。
「使えない娘だ。
残念だよ、……フィリーナ」
捨てるように顔を離され、冷たい言葉が吐きかけられる。
本当にただの捨て駒だったという現実を突きつけられ、フィリーナは石畳についた手を悔しさにぎゅっと握りしめた。
――グレイス様が、これほどまでに心を汚されているとは、思っていなかった。
レティシア様を想う純粋なお心は、もっと素直にそれを貫かれるような強く芯の通ったものだと思っていたのに。
いくらディオン様を邪険に思われていても、正面からぶつかることをされないのなら……
「ディオン様は、わたくしがお守りいたします」
冷たい水を握りしめるフィリーナの心が奮い立つ。
濡れるのもいとわず片膝をついたグレイスは、片掌で乱暴にフィリーナの顎を掴み上げる。
「もっと深く僕から抜け出せないように、密な男女のまぐわいまで教えておくベきだったかな」
口づけられそうなほどに間近の囁きは、今までそれをどこに隠していたのかと疑うほどおぞましい。
「使えない娘だ。
残念だよ、……フィリーナ」
捨てるように顔を離され、冷たい言葉が吐きかけられる。
本当にただの捨て駒だったという現実を突きつけられ、フィリーナは石畳についた手を悔しさにぎゅっと握りしめた。
――グレイス様が、これほどまでに心を汚されているとは、思っていなかった。
レティシア様を想う純粋なお心は、もっと素直にそれを貫かれるような強く芯の通ったものだと思っていたのに。
いくらディオン様を邪険に思われていても、正面からぶつかることをされないのなら……
「ディオン様は、わたくしがお守りいたします」
冷たい水を握りしめるフィリーナの心が奮い立つ。