冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
 帰路を急ぐものの、頭上では太陽がじわじわと夜に押され始めていた。
 夜になってしまえば、帰り道は月明かりに頼らなければならなくなる。
 そうなる前にと、長く伸びた影を追いながら、フィリーナは昼間通ってきた道とは違う方へと足を向けた。

 あまり人の通らない林の中は、草が気持ち程度にしか道を開けてくれていなかった。
 一足先に夜に眠り始めている木の生い茂る林。
 その奥を横目に見ると人ならぬものでも出てきそうで怖いけれど、馬舎の通れる開けた道を行くよりも、足で行くなら断然こっちの方が早く抜けられるからと息を切らせて先を急いだ。
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