冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
 フィリーナは祭壇の前でひざまずき、胸元で手を組んで祈りを捧げる。

 ――神様どうか、この国と……大切な王子二人を、お守りください……

 痺れるほど強く手を握りしめた。

 自分が二人を守りたいと、そう思ったのは嘘ではない。
 だけど、神に祈りを捧げなくてはならないほど、悪しき何かが、王子二人の背後で蠢いているような気がしてならなかった。

 ――今まで、他国の群を抜いて平和な国のはずだったのに……

 あのとき、私欲に負けそうになった自分の至らなさは、大いに悔いている。
 だけど、あんな風に関わりをもたなければ、無知な自分ではきっとはかり知ることはできなかった事態だ。
 足を踏み入れたことに後悔はない。
 まだ自分には何かできることはあるはずだ、とフィリーナは組んだ手に付けていた額を上げ、高く掲げられた十字架を見上げた。

 すると、誰も居ない礼拝堂に扉の開く音が響いて、はっと振り返った。
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