冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「遅くなって申し訳ありません」
覚悟していた痛みは一向に訪れず、フィリーナは恐る恐る顔を上げた。
「遅いぞ、ダウリス。何をしていた」
「申し訳ございません。一瞬目を離した隙に見失ってしまいました」
見上げたそこでは、短剣を持っていたメリーの手が、ダウリスのたくましい腕にひねられ、醜いうめき声とともに取り押さえられていた。
「お怪我は」
「大丈夫だ。それより……」
想像していた未来と違う現実に固まるフィリーナの身体が、ぐいと強く引き寄せられた。
「なんてことをするんだ!!」
フィリーナを閉じ込める腕の中で、ディオンは大きく息を吐いた。
「ディ、オン様……」
「ダウリスが間に合っていなければ、どうなっていたか……っ」
息がしづらくなるほどの腕の強さに、胸がいっぱいに膨らむ。
ゆっくりと噛み砕いた状況に、途端に安堵が溢れ出した。
「大丈夫でございますか? ディオン様」
「君という娘は……っ」
ディオンは傷つけられることなく、フィリーナを強く抱きしめるくらいの力を持っている。
もう一度大きな溜め息が、温かな腕の中で聞かされた。
覚悟していた痛みは一向に訪れず、フィリーナは恐る恐る顔を上げた。
「遅いぞ、ダウリス。何をしていた」
「申し訳ございません。一瞬目を離した隙に見失ってしまいました」
見上げたそこでは、短剣を持っていたメリーの手が、ダウリスのたくましい腕にひねられ、醜いうめき声とともに取り押さえられていた。
「お怪我は」
「大丈夫だ。それより……」
想像していた未来と違う現実に固まるフィリーナの身体が、ぐいと強く引き寄せられた。
「なんてことをするんだ!!」
フィリーナを閉じ込める腕の中で、ディオンは大きく息を吐いた。
「ディ、オン様……」
「ダウリスが間に合っていなければ、どうなっていたか……っ」
息がしづらくなるほどの腕の強さに、胸がいっぱいに膨らむ。
ゆっくりと噛み砕いた状況に、途端に安堵が溢れ出した。
「大丈夫でございますか? ディオン様」
「君という娘は……っ」
ディオンは傷つけられることなく、フィリーナを強く抱きしめるくらいの力を持っている。
もう一度大きな溜め息が、温かな腕の中で聞かされた。