冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「娘がお世話になっております。このような高貴な方のお目に留めていただき、母としても本当に光栄なことでございます」

 見覚えがあると感じるのは当然のことだ。
 今日王宮に招いたのは、フィリーナの家族。
 病弱にも淑女たる雰囲気を持つのは、フィリーナの母。
 そして、隣にいるフィリーナと同じ赤い髪の娘は、

「お、お初にお目にかかります。フィリーナの妹、カレンでございます」

先日、フィリーナが実家に送ったらしい淡い橙色の清楚なドレスをつまみ、たどたどしくもレディらしく粛々と頭を下げてみせた。

「わざわざ来てくれてありがとう。お母さん、身体大丈夫? 疲れてない? カレンも、慣れない馬車で疲れたでしょう?」

 久々の家族との再会に喜ぶフィリーナは、いつも漂わせる緊張感を解いたようだ。
 近くに並ぶとよくわかる赤髪の姉妹は、母譲りの愛らしい感じがよく似ている。

「初めまして、バルト国王子兼騎士団長を務めておりますグレイス・バルティアです」

 まさしく公務で使う作った笑みを口元に携えて、グレイスは二人に自己紹介をする。

「お初にお目にかかります……」

 慣れない王族との交流に、あわあわと口唇を震わせ慌てるカレンの様子を見て、グレイスはさすがフィリーナの妹だとかすかな興味に胸をくすぐられた。



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