冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
*
丸い月が綺麗で、グレイスは美しい月夜を肴に、灯りを消した部屋の窓際に椅子を寄せ葡萄酒を傾けていた。
開け放した窓からは、静かな夜風が滑り込み、月明かりに風情を添えている。
感慨深げに月の浮かぶ夜へと意識を飛ばすと、先ほどの夕食のことが思い出された。
ディオンとフィリーナの家族同士の顔合わせ。
とは言っても、こちらの父は床に伏して列席することはできず、フィリーナの方の二人の家族を加えただけの夕食会となった。
フィリーナは久しぶりの家族との食事ですっかりはしゃいでいる様子だった。
隣同士に座った姉妹は、ここが王宮であることを忘れ、顔を見合わせてはくすくすと楽しげに笑い、そしてそれを、母親に咎められ肩をすくめる仕草も良く似ていた。
――普通の兄弟はあんなに仲良く会話を弾ませるものなんだろうな。
自分はどうだろうと思い返すと、幼い頃から二人でよく遊んでいた兄の無邪気な笑顔を覚えてはいるものの、母を亡くしてから成人に近づくにつれ、凛としつつも次第に厳しい表情をするようになった兄に、少しずつ距離を感じ始めていたことを思い出した。
丸い月が綺麗で、グレイスは美しい月夜を肴に、灯りを消した部屋の窓際に椅子を寄せ葡萄酒を傾けていた。
開け放した窓からは、静かな夜風が滑り込み、月明かりに風情を添えている。
感慨深げに月の浮かぶ夜へと意識を飛ばすと、先ほどの夕食のことが思い出された。
ディオンとフィリーナの家族同士の顔合わせ。
とは言っても、こちらの父は床に伏して列席することはできず、フィリーナの方の二人の家族を加えただけの夕食会となった。
フィリーナは久しぶりの家族との食事ですっかりはしゃいでいる様子だった。
隣同士に座った姉妹は、ここが王宮であることを忘れ、顔を見合わせてはくすくすと楽しげに笑い、そしてそれを、母親に咎められ肩をすくめる仕草も良く似ていた。
――普通の兄弟はあんなに仲良く会話を弾ませるものなんだろうな。
自分はどうだろうと思い返すと、幼い頃から二人でよく遊んでいた兄の無邪気な笑顔を覚えてはいるものの、母を亡くしてから成人に近づくにつれ、凛としつつも次第に厳しい表情をするようになった兄に、少しずつ距離を感じ始めていたことを思い出した。