冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「私と過ごす時間よりも、か?」
「えっ、いえ、そんな……っ、あ、……ディオ……」

 言葉を途中で止めさせられたらしいフィリーナの声に、心臓がどくりと反応した。

「……っ、だめ、です……ディオン、様……隣に……ん……」
「灯りは消えている。君が大きな声を上げずにいればいいだけのことだ」
「そんな……っ、やっ……」

 抵抗しているらしい声に、グレイスはどうしようもなく雄の本能が掻き立てられるのを感じた。
 合間に聴こえる小さな水音にも、本能的にいかがわしい想像を煽られる。

 ――そういうのは、誰にも聴かれないとこでやれ、色惚けどもめ……

 苛々と悪態を吐きながらも、自分の中の何がそう思わせているのかを、グレイスは見ないふりをして、静かに自分の部屋を出た。



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