冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「よかったです、グレイス様」

 就寝用の白い寝着に厚手のショールを纏ったカレンは、ほっと息を吐く。
 月明かりのせいなのか、かすかに瞳を揺らすカレンの儚げな表情に、グレイスの中の何かがむずりと燻った。

「この広い王宮の中で、給仕室を探すのも一苦労でございまして」
「給仕室?」
「はい、母に就寝前の薬を飲ませたかったのですが、いただきましたお茶では飲めないものですから、お水を少々いただけないかと思い探していたのですが」

 侍女を付けてはいたものの、もう休むとなれば用はなく、引き上げさせていたのだろう。
 どこに声を掛ければいいのかすらもわからず、カレンは一人王宮内をうろうろとさ迷っていたのだ。

「給仕室なら反対側だ。案内しよう」
「あっ、ありがとうございます……!」

 わかりやすく顔を明るく煌めかせ、素直に頭を下げるカレンに、グレイスはまた胸に違和感を覚えた。
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