冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「憐れに見えるか? 僕は」
「……!……
 そ、そんなことは……っ」

 ぱっと顔を上げると、口もとに笑みを浮かべた美しい人は、カップを置いてバルコニーの手すりに背を預けて立っていた。

「正直に言ってくれて構わない。誰が聞いても、いい顔はしないさ。
 それはそうさ……次期国王のフィアンセとの色話など、手を叩いて喜べるわけがないからな」

 青い空が風を送り出し、目を細めた美麗な顔に憂いを挿す。
 儚さを醸し揺れる白銀の髪が切ないほどに美しくて、フィリーナの胸は強く締めつけられた。

 ――愛した人が、他の男性と結婚するとわかっていて、それでも、その想いを偽ることなく大切になさっているなんて……

「わたくしは……素敵だと、思いました」

 フィリーナは心のままに苦おしく呟くと、碧い瞳が瞬き驚いたように見つめてきた。

「お前……」

 はっとして気づいたときには、フィリーナの口は失礼なことを言ってしまった後だった。
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