冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
*

 胸に重いものを抱えたまま迎えた翌日。
 今日は、ディオンとフィリーナの婚儀の日。
 周辺諸国の王族や貴族を招いての披露宴は後日行われるが、神前式は王宮の礼拝堂で、身内と使用人だけで執り行われた。
 
 白の正装をした凛としたたずまいのディオンと、その隣で真っ白のドレスに身を包んだフィリーナが神の前で誓いを立てている。
 
 “互いの愛を信じ、いかなる時でも互いを支え合うことを誓う。”

 今のグレイスには、その言葉の前で、素直に祝福を笑みに乗せることはできなかった。
 もちろん、幸せそうな二人を疎んじることなどはしなかったけれど、ただ小さな劣等感が胸を締めつけていた。
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