冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑

「いつ見てもお綺麗ね」
「ええ、まもなくこちらの王宮で毎日をお過ごしになるのかと思うと、溜め息が止まらないわ」

 張り詰めていた空気が解けると、フィリーナの気持ちを代弁するように他の使用人達も溜め息を零す。

 レティシア姫の今回の来訪の目的は、ディオン王太子との面会だ。
 二人の婚約が決まってから、レティシア姫は度々この王宮を訪れるようになった。
 国のための結婚とはいえ、二人ともが互いに歩み寄り親交を深めようとしている姿は、両国の平和と安定を意味しているようだと、フィリーナは思っていた。

 各々の仕事へと戻っていく使用人達に紛れ、フィリーナは白いエプロンを揺らして給仕室へと足を向ける。
 このあとレティシア姫へお茶を出すことを命じられていて、少し浮足立つのを感じていた。


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