冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「君は」
昨日の出来事から、今しがたグレイスに言われた言葉までを頭の中でぐるぐるとかき混ぜていると、先にディオン王太子が口を開いた。
「近頃、グレイスと親しくしているのか?」
深く澄んだ声が出した名前にどきりとしたものの、言われた質問の意味をやっと理解したところで、フィリーナは頭を下げたまま目を見開いた。
――し、親しく……っ!?
直球で口にされたものだから、余計にその意味が恥ずかしかった。
まるで、これまでのグレイスとの甘い時間を見られていたようで。
「あっ、あのっ、そのような、ことではなく……っ、その……たっ、ただ、話し相手を、おおおおお仰せつかっておりまして……っ」
誤解を解こうと説明するものの、まだ記憶に新しい甘さが口唇に残っているようで上手くろれつが回らない。
「そうなのか。あれもやっと、私を気にせずに自由に想い合える相手を見つけたのかと安心していたんだが」
「わ、わたくしごときに、そのような相手など務まるはずはございません……っ」
あまりに恐れ多い誤解に、ますます深く頭を下げた。
昨日の出来事から、今しがたグレイスに言われた言葉までを頭の中でぐるぐるとかき混ぜていると、先にディオン王太子が口を開いた。
「近頃、グレイスと親しくしているのか?」
深く澄んだ声が出した名前にどきりとしたものの、言われた質問の意味をやっと理解したところで、フィリーナは頭を下げたまま目を見開いた。
――し、親しく……っ!?
直球で口にされたものだから、余計にその意味が恥ずかしかった。
まるで、これまでのグレイスとの甘い時間を見られていたようで。
「あっ、あのっ、そのような、ことではなく……っ、その……たっ、ただ、話し相手を、おおおおお仰せつかっておりまして……っ」
誤解を解こうと説明するものの、まだ記憶に新しい甘さが口唇に残っているようで上手くろれつが回らない。
「そうなのか。あれもやっと、私を気にせずに自由に想い合える相手を見つけたのかと安心していたんだが」
「わ、わたくしごときに、そのような相手など務まるはずはございません……っ」
あまりに恐れ多い誤解に、ますます深く頭を下げた。