現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「ちょっとみんな、集まってくれ」

課長が声をかけると、融資課の社員たちがこっちに振り向き、課長の席へと集まってくる。

ちょうど今、融資課にお客様が来ていないのもあり、課長はみんなの前で話を始める。


「みんなもよく知ってると思うが、井原さんが今日から融資課の係長となる。
役席とはいえ、昨日まで預金事務課にいたわけだから、融資課での業務は慣れるまでは大変なこともあると思う。みんなでフォローしてあげるように、よろしく」

課長がそう言い終えると、融資課の社員のみなさんがペコ、と軽く頭を下げる。


融資課の社員は、預金事務課の社員の数と比べると少ない。

課長と私のほかには、課長代理の坂野さんという男性社員、入社四年目の牧原さんという女の子と、同じく四年目の香島くんという男の子の五人だ。牧原さんと香島くんは同期で、仲がいい。


課長が話したのはそれだけで、その後はすぐに、みんな各自の仕事に戻った。


私は、今日は一日、課長や牧原さんにいろいろ教えてもらいながら、融資課の業務の流れについて掴めるように努めた。


課長は、クールだけど決して悪い人じゃない。みんなを集めて、私のこと『フォローしてやってくれ』って言ってくれたし。

……でも、やっぱり。〝あの日〟のことがあるから、私は彼のことを警戒してしまうし、なかなか目も合わせられない。


とにかく。早く仕事を覚えよう。このままじゃ、牧原さんにいろいろ迷惑をかけ続けてしまうかもしれない。
私は係長になったんだ。後輩に迷惑をかけちゃいけない。

係長なんて私には向いていないだろうけど、それでも、選んだのは自分自身だから。
しっかりがんばらなくちゃーー。
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