現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
融資課で係長として働き始めて、一週間が経った。
少しずつ仕事も慣れてきたけど、まだまだ手こずってばかり。新しいことを覚えることは得意な方だけど、決して要領は良くないのだ。
それに加えて、今日は坂野代理が熱でお休みをしているため、私が彼の分の仕事もしている。
幸い、特別仕事が多い日じゃないから、少し残業をすればそう遅くない時間に帰れると思うけど。明日は金曜日だし、多少の残業は気にしない。
ところが。
「香島、牧原さん、ちょっと来てくれるか」
定時を迎え、帰り支度を始めていたふたりに、課長が声をかける。
私は呼ばれなかったので、自分の席で代理の分の仕事を片づけていたのだけれど、課長の席は私の席のすぐ後ろだから、三人の会話が聞こえてくる。
「定時過ぎに申しわけないんだが、営業課長がこれだけの案件を持ってきてな。月曜日に融資実行したいから、これからすぐに書類の確認と登録をしてほしいんだ」
なるほど。案件がいっぱい来ちゃったんだ。通常は実行日ギリギリに確認前の書類を持ってくるってあまりないけど、お客様の都合もあるから、まったくないとも言い切れない。こういうこともたまにある。量が多いのは大変なことだけれど。
香島くんと牧原さんは、明らかに不満そうにしていた。このふたりは、決して悪い子たちじゃないんだけど……どうにも、仕事に対して熱意ややる気はあまりない様子だ。まあ、私も人のことは言えないけど。
だけど、課長が「じゃあ、よろしく」と言って、有無を言わさなかった。課長は決して強引というわけではなく、あくまでいつもクールなのだけれど、クールゆえにちょっと怖そうな雰囲気があり、逆らうことはできない。いや、部下が上司に逆らうなんて普通にしちゃいけないことだけれど。