現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「どうして? 彼が本当はサヨコちゃんのことを好きではないんじゃないか、って不安だったってこと?」

「彼が私のことを好きでいてくれてる、っていうのはちゃんと感じていたよ?
でも、その時は急に不安になったの。彼みたいな、カッコ良くて仕事ができて女性からモテモテの人が、私なんかを選ぶなんてやっぱりおかしいな、って」

「どうして? なにがおかしいのよ。彼は、サヨコちゃんの仕事ぶりを見て、サヨコちゃんのことをいいなと思ってくれた、っていうふうに言ってくれたんでしょ? もっと自信持ちなさいよ。サヨコちゃん、係長なんでしょ? 仕事できるから役職を任されてるんじゃないの?」

「仕事ぶりって言っても……私、決して要領がいいわけじゃないし。むしろ悪いし……。彼の方が何倍も仕事できるもの。私は、たまに100万円と1,000万円読み間違えるし」

「その読み間違えは銀行員としてどうなの?」

リンゴさんのツッコミはもっともだけれど、とにかく、私は決して、バリバリ仕事をこなせる人間というわけではない。だから、彼が私を気にし始めてくれた理由も、どうも信じられなくて。


だけどそれって、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまって、彼のことを全然気遣えていなかった、ってことだよね。
やっぱり、聞くべきことではなかったと思う。
だけれど……。


「サヨコちゃんのその質問はどうかと思うけど、彼がその質問に言葉を詰まらせたのは事実ってことか」


リンゴさんの言葉に、私は黙って頷く。

そうなのだ。彼が否定してくれなかった。それは紛れもない現実なわけだ。

私の質問に対して、怒りで黙りこんだ、という感じではなかった。
あれは明らかに、返答に困って戸惑っている様子だった。
……困る、ということは、私の質問を否定できなかったから、だろう。

否定できなかったということは、事実だったからだよね。


考えこんで、どんどん俯いてしまう私に、リンゴさんは言った。


「もうさ、彼と自分のことでそんなふうに悩んで暗くなるのやめて、腐女子思考に変換しちゃえば?」

リンゴさんの言っていることがすぐに理解できずに、今度は私が首を傾げると。


「サヨコちゃんが彼氏に、『私のこと、本当は好きじゃないでしょ? じゃあなんで私と付き合ったの?』って聞くの。彼は言葉を詰まらせるんだけど、やがてサヨコちゃんと付き合っていた理由を話してくれるの。それは、職場の本命(男)に恋していることを周囲にカムフラージュするためだった」

的なね、と最後に付け足して、リンゴさんは笑った。
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