現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
そうか、この人。


……自殺を図ったという、志木さんの元彼女さん……。


こんなにキレイな人だったんだ。清楚で、大人しそうで……私とは全然違う。

ここまでタイプが真逆だと、志木さんが私を選んだ理由はやっぱり……なんて考えてしまうけれど、”そういう考えはダメなんだってば!!”と、お盆を持ったまま、ひとり首を全力で横に振った。



お盆を片づけた後は自分の席に戻って仕事を再開したけれど、やっぱりふたりの会話は届いてこなかった。

しばらくして――十分ほどだろうか。橋田さんは帰っていった。

長い髪に表情が隠れて、彼女がどんな顔をして帰っていくのか、ほとんど見えなかった。


橋田さんが店から出ていったのを確認してから、志木さんが自分の席に着く。


「お昼、もういいんですか?」

振り向いて、そう尋ねてみる。そのくらい聞いても、いいよね。もともとお昼休憩中だったところを、電話してすぐに戻ってきてもらったわけだから、お昼はちゃんと食べたのだろうかとか、心配になる。いつも休憩から戻ってくる時間より、まだ少し早いし。


「ああ」

志木さんは、私と目を合わせず、そっけなくそう答えるのみだった。


クールな様子はいつも通りだけれど、やさしさが全然感じられない、声も表情も、ただただ冷たく感じた。



結局、その後も志木さんとはろくに話をすることができなかった。

でも、『もう一度付き合いたい』という橋田さんの言葉が、頭の中を何度も何度もぐるぐる回って、そのたびに不安になった。


金曜日の仕事終わり、家に帰ってから、勇気を出して、
【話がしたいので、明日会えませんか?】
というLINEメッセージを送ってみた。


だけど、一時間後に彼から送られてきた返信には、
【用事があるからごめん】
と書かれていた。


……用事ってなに?
ほんとに用事があるならもちろん仕方ないけど、もしかして、単に私を避けてるだけ?

いろいろ考えて、どんどん暗い気持ちになる。


寝ようと思って、ベッドの中で彼を想う。
心がぎゅっと締めつけられて、苦しい。幸せな気持ちになんて、一ミリもならない。


明日はせっかくの休日なのに、こんな気持ちでいたらダメだ。

そう思い、明日はひとり、久しぶりにアニメショップに買い物へ行くことにした。
< 117 / 142 >

この作品をシェア

pagetop