現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。

戻ってきた彼が、ロビーで待つ橋田さんに声をかけると、橋田さんがさっきまでの無表情がウソのようにパッと笑顔になったのが私の席からも見えた。

志木さんは、橋田さんを融資課の窓口に連れてきた。


「私、お茶淹れますね〜」

牧原さんが席を立ち、志木さんたちの方を見ながら私にそう言う。

牧原さん、前まではお客様に進んでお茶出ししたりしなかったのに、できるようになったんだなあ。うれしい。


……でも、今日は。


「わ、私、今手空いてるから、私がやるね」

私の席からじゃ、志木さんと橋田さんの会話が聞こえない。……いや、盗み聞きするつもりもないんだけどさ(少ししか)。

お茶を出しに行った時に、少しでもいいからふたりの関係を探りたい。ふたりの会話を聞きたい。
そんな動機からお茶を淹れたから天罰がくだったのか、ポットのお湯が手にかかってちょっと火傷した。


「失礼します」

熱々のお茶をふたり分、ふたりの前に置く。

橋田さんは相変わらず無表情で、志木さんは「ありがと」とそっけなく言う。


「じゃあ、元気でやってるんだ」

「うん。カズも元気そうで良かった」

……そんな会話が聞こえてきた。


志木さんの声は、すごくやさしく聞こえた。
……このやさしい声をかけるの、私にだけじゃないんだ……って、そんなの当たり前よね。

カズ。さっきと同じく、志木さんのことを名前で呼ぶ橋田さんが、なんだかうらやましく感じる。


このふたり、本当にいったいどういう関係なの?

だけど、私は用が済んだら早くこの場を去らないと不自然だし、必死に聞き耳を立てようとしながらも、すぐに離れようとした。


……その時に。



「……カズと、もう一度付き合いたいの」


……と、聞こえてきた。
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