現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「あ。じゃあ私のことも名前で呼んでください」

私だけ役職名で呼ばれるのも変だな、と思い、私は彼にそう言った。


すると彼は。


「え? 沙代?」

急に名前を呼ばれ、私の頬がボッと熱くなる。


「な、なんでですか! 井原って呼んでくださいよ!」

「ああ、そっちか。いや、名前でって言われたから」

「たっ、確かにそう言いましたけど! そこは流れで、〝名前イコール名字〟ってことはわかるでしょう!」

つい、ムキになって声を荒げてそう言ってしまった。電車の中なのに。相手は上司なのに。

だけど志木さんは冷静なまま、「はいはい」といつものクールな様子で答える。ぐぅ。私もしや、バカにされてる?


そうして電車が最初の駅に着いた頃、ふと志木さんが「あ」と口を開く。

「ていうか俺さ、『遅いから送ってく』とか言って今こうしていっしょに電車乗ってるわけだけど」

「え? はい」

「もしかして井原さん、彼氏とかいる? いるとしたら、彼氏に迎えに来てもらいたかったかなって。俺、ただのお節介だった?」

そんなことを言われ、私はブンブンと首を横に振る。

「い、いないですよ、彼氏。だからお節介だなんて。いっしょに帰っていただいてうれしかったです」

志木さんの意外な一面も知れたし……とは、口に出して言えなかったけど。とにかく私はうれしかったのだ。



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