現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「ま。とりあえずこの話は終わり。飯作りますか」

彼はなにごともなかったかのように、クルッと私に背を向けて、キッチンの方へ向かっていく。


なに作るんですか?と彼の背中に問いかければ、「鶏の照り焼きと、白菜のサラダ」と返ってくる。確かに、そこまで凝った料理ではないけれど、サラッと答えるその感じが、彼が料理に慣れている様子を醸し出していた。


「あの、手伝いますね」

彼氏とはいえ、上司にご飯の支度をさせるわけにもいかず、私はそう言った(料理できない女って思われたくなかったというのもある)。


その後、キッチンでふたりで食事の支度に取り掛かった。

相変わらず志木さんは、「こうしてると、まるで新婚みたいだね。ドキドキする」なんて甘い言葉を投げかけてきたけど、私は「そ、そうですか?」と必死に平静を装った。でも、顔が赤くなってしまっていたのは、どうしてもごまかせていなかったと思う。


食事を済ませた後は、交代でお風呂に入る流れになった。

「いっしょに入る?」なんて冗談(?)も言われたけど、そういうことを言ってからかってきそうだなというのはなんとなく予想もついていたので、「お断りします」とキッパリ言うことができた。


志木さんがお風呂に行っている間、「適当に寛いでて」と彼に言われた。

とはいえ、他人の家でどう寛げばいいのかわからない。

勝手に彼の部屋に入るわけにはいかないから、居場所は必然的にリビングのみになる。
でもこのリビング、漫画ないし。
携帯でもいじるか。
あ、充電切れそう。

充電器はバッグに入ってるし、コンセント借りていいかな?
多分ダメだとは言わないだろうけど、一応一言くらいことわっておこう。

そう思い、私は浴室の方へと向かった。

脱衣所のドアの前で、「志木さん、志木さん」と声をかけてみる。

だけど、浴室からはシャワーの音が聞こえてくるのみだった。
シャワー浴びてたら聞こえないか。

……それにしても、シャワーの音聞くのって、なんかドキドキするなぁ……。いやいや、変なこと考えるな私! 実家でお父さんがシャワー浴びててもドキドキなんてしないでしょ!?

と、ドアの前でそんなことを考えていると、いつの間にかシャワーの音が止まっていることに気がつかなかった。


「あれ、バスタオル出してなかったっけ……」

志木さんのそんなひとりごとが脱衣所の方から聞こえてきたと思った瞬間、ガチャッという音とともに、目の前の戸が開いた。


「!!?」

思わず、言葉を失った。

目の前の志木さんが、腰にタオルを巻いた状態――ほぼ裸で現れたから。
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