現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「沙代っ?」

さすがの志木さんも、私を見て少し驚いたような顔をしていた。

でも、私に比べたら冷静で。

「バスタオルがなかったから取りに行こうとしたんだけど、沙代はどうしたの、こんなところで。……沙代?」

私は言葉を失ったまま、固まってしまっていた。


だけど。
恥ずかしいのに、「キャーッ」と言って逃げ出したいはずなのに、私はなぜかそれができず、彼の身体に釘付けになってしまっていた。

普段スーツを着ている姿からだと、そんなに筋肉質には見えないのに、腕は逞しいし、腹筋も、割れてる。
男の人の身体を見るのは初めてじゃないけれど、今まで見た男性の身体の中で一番キレイだと思ってしまった。

だから、動揺しながらもついまじまじと見つめてしまっていたんだけど……。


「そんなに見られると恥ずかしいんだけど」

「はっ!」

志木さんにそう言われて、私はようやく、自分がいかに恥ずかしいことをしていたかに気づいた。


「キャーッ!」

ようやく叫び声をあげて、私はリビングに逃げた。


さっきまで座っていたソファに腰かけて、バクバクとうるさい心臓をなんとかして抑えこもうとするも、うまくいかない。

しばらくして、後ろから「沙代」と声をかけられる。
ドッキン!と心臓が一層大きな音を立てて弾むけれど、おそるおそる振り向くと、そこにいた志木さんはちゃんとTシャツを着て、ズボンを穿いていた。
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