現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
そして、彼はさっきまで横になっていたと思われるベッドにあがる。

「どうぞ」

そう言われ、私もゆっくりと彼の隣に入りこんだ。


「ほ、ほんとになにもしちゃダメですからね」

「わかってるよ」

そう言うと、彼は「お休み」と続けた。


ど、どうしよう。
背中を向けているとはいえ、すぐ後ろに彼がいるということを意識せざるをえない。シングルベッドにふたりで入っているから、嫌でも身体は密着気味だし。
あのBL本のことで脅されて無理やりいっしょに寝ているわけじゃない。この状況は、あくまで私の意志によるものだ。だから、今さら「やっぱひとりで寝ます」とも言えない。
でもこのままじゃ、寝られない!!
さっき、『今なら寝れる気がする』とか思ったけど、無理、無理!!


ていうか、志木さんは寝ているの?
私が隣の部屋にいることを考えただけで寝られないって言っていたのに、この近距離で、同じベッドに入っていて、寝られるの?

気になって、チラ、と顔だけ彼に向ければ、仰向けになりながら目を瞑る彼からはスースーという寝息が聞こえてくる。
ウソ、本当に寝てるの?
もしかして、私が隣の部屋にいるから寝られなかったっていうさっきの発言はウソだったのか?
彼の寝顔を見つめながら、「志木さん」と小声で呼びかけると。


「なに?」

目を瞑ったままの彼から、そんな返事がきた。


「あっ、ごめんなさい。もしかして、起こしちゃいましたか?」

慌てて謝ると、彼は目を開けて、顔を私の方へ向けて、


「違うよ。眠れなかっただけ」

と答える。

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