現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
緊張がひどすぎてうまく言葉を出せないでいると、彼は私から完全に離れて、

「ごめんごめん。本当に俺、沙代のこと困らせてばっかりだな」

と、笑って答えた。


……本当に笑顔だったら、「そうですよ、なに言ってるんですか!」って怒れるのかもしれない。
だけど。


……すごく、悲しそうな顔で笑うから。


悲しいことがあると、いつもそんなふうに笑うの?
いつもクールだけど、ちゃんと泣いて、ちゃんと笑ってる?

……そういえば私、志木さんのこと、まだなにも知らない。



「じゃ、お休み」

そう言って私に背中を向ける彼の右手を、私は気がついたら握っていた。


「沙代?」

彼は私に振り向くけれど、私は恥ずかしくて、俯くことしかできない。

でもせめて、自分の気持ちはハッキリと伝えなくちゃ。


「……ですよ」

「え?」



「……なにもしないなら、いっしょに寝ても、いいですよ」



私にしては、驚くほどに大胆発言。
今まで付き合ってきた人たちにさえ、こんなこと言ったことない。


だけど、今は。言わなきゃ、って思ったの。



志木さんは振り返って、さっきみたいに私の頭をポン、と撫でると。

「うん。約束は、守るよ」

そう言って、今度は彼が私の手を握り、そのまま手を引かれるようにして、私は彼の部屋へとおじゃました。
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