現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
ドアノブを回し、玄関を開ける。

……そこにいたのは、お父さんかお母さんのお客さんではなく、宅配便でもなかった。


そこに、いたのは。



「あ、沙代。ちょうど良かった」


……まさかの、志木さんで。



ーーバタン‼︎


私は勢いよく玄関の戸を閉めた。


別に、志木さんを拒絶しているわけではない。
急に家に来られて、不快になったというわけでもない。


「沙代。急に尋ねてきてごめん。この一週間、職場ではちゃんと謝らなかったから、休日にきちんと話をしたくて」

戸の向こうから、志木さんの困ったような声が聞こえる。

困らせているのは、私。それはわかっているんだけれど。


「ダ、ダメです! こんな恰好してるとこ、見られるわけには……!」

そう。今日は一日中家に引きこもって絵を描いたりゲームしたりするつもりだったために、980円のトレーナーに、ズボンもジャージ。当然化粧はしていないし、髪も最低限梳かしただけ。普段はコンタクトだけれど、今日は丸メガネだ。

……志木さんならありのままの私を好きになってくれるんだろうな、と先日思ったこともあったけれど、それとこれとは違うというか……!
この姿を見られたら、私の女性としてのなにかが終わる気がして、とてもじゃないけど志木さんを家に迎え入れることはできなかった。


「沙代、沙代?」

だけど、志木さんがあまりにも困っているような様子を続けるから、仕方なく、戸を開けられない理由を正直に告げた。
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