現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「まぁ、詳しい話はまた営業時間後にでも教えてくれ! とりあえずは、もうお客さんも来てるし、仕事の方を頼む」

「はい」

「課が変わって大変だと思うが、よろしく頼むな!」

そう言って支店長は私の肩をポンと叩き、営業室から出ていった。外出用の鞄を持っていたから、ちょうど出かけようとしていたところだったのかもしれない。


ひとり残されたその場で、私はふぅ、と深呼吸した。


そう、支店は変わらないけど、今日から課が変わる。


今までは、預金事務課という場所で、預金口座の開設や、お客様の氏名や住所などの変更手続きの仕事を主にしていた。
女性が多い課だったから雰囲気も気楽だったし、できれば係長としての初仕事は預金事務課でやりたかった……。

でも、預金事務課にはすでに私よりベテランの係長がいるため、私は、隣の融資課に動くことになった。
融資課は、その名の通り、お客様への融資関連の仕事をするところ。融資課は、今回の年度初めの人事異動でそれまでの係長が別の支店に異動になったため、その席に私が入ることになった。

融資業務自体はやったことあるけど、この東駅前支店に来てからはずっと預金事務課だったから、この支店で融資業務をするのは初めてだ。あぁ、すっごく不安だなぁ……。それに……。


(あぁ、〝あの人〟にも、交付式から帰ってきたって報告しなきゃ)

私はゆっくりと、融資課の方へ歩いていき、その人にあいさつをした。


「か、課長。戻ってきました」

後ろからそう声をかけると、その人――志木課長は、ゆっくりと私に振り向いた。


「ああ、お帰り」

あぁ、いつ見てもカッコいい顔をしている。どうやったらこんな美形がこの世に生まれるんだろう。
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