次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
(リズはどこまで知っているのかしら‥‥)プリシラはポットのお茶をティーカップに注ぎながら、そんなことを考えた。パーティー中止の理由は公にはフレッド急病のためと説明された。だが、王太子宮に勤める者や国王夫妻の近くにいる人間は失踪という事実を知っているだろう。となれば、王宮内に噂が広まるのも時間の問題かもしれない。花婿に逃げられてしまった花嫁として、どんな態度を取るのが正解なのか‥‥これまで、みなの望む「未来の王妃様」を完璧に演じきってきプリシラにもさすがに難題だった。
「どうしたらいいのか、さっぱりわからないわ」
思わず、ひとりごちる。そもそも、フレッドの身に一体なにが起きたのだろうか。置き手紙を残しているということは自分の意思で出ていったことに間違いはないのだろうが、思い当たる節など全くない。フレッドは次期国王となるにふさわしい器量の持ち主で、本人もそれを十分に自覚していたように思う。
(他に好きな人がいて、私との結婚が嫌だった‥‥とか?それとも、誰にも打ち明けられない大きな悩みを抱えていたのかしら?)
色々な可能性を考えてはみるものの、どれも正解のような気もするし、全くの見当違いのようにも思える。
(私、フレッドのこと本当になにも知らないのだわ)
改めてその事実に思い至り、プリシラは愕然とした。幼い頃からよく知っていて、兄のように慕ってきた。婚約者となってからは彼の妻としてふさわしい女になれるよう努力もしてきたつもりだった。フレッドは誰にでも優しく、いつも明るかった。天性の人たらしで、誰もが彼のとりこになってしまう。
だけど、そんな彼にも人には見せない顔があったのかもしれない。プリシラはそれに気がつきもしなかった。こんな事態になっても、彼がなにを思っていたのかさっぱりわからないのだ。
「こんなんじゃ、婚約者失格よね。ごめんなさい、フレッド。どうか、無事でいて‥‥」
プリシラがそう小さく呟いたときだった。ベッド横の大きな出窓にカツン、カツンとなにか当たるような音が聞こえた。
(えっ!? もしかして‥‥フレッド!?)
プリシラは慌てて、窓を開け外を覗いた。暗闇の中に立っていたのはフレッドではなく別の人物だった。
「ディ、ディル!? 一体、どうして?」
「入るぞ」
「えっ‥‥なにを馬鹿なことを‥‥」
プリシラが止める間もなく、ディルはふわりと飛び跳ねると開け放たれた窓から部屋の中へと体を滑り込ませた。
「どうしたらいいのか、さっぱりわからないわ」
思わず、ひとりごちる。そもそも、フレッドの身に一体なにが起きたのだろうか。置き手紙を残しているということは自分の意思で出ていったことに間違いはないのだろうが、思い当たる節など全くない。フレッドは次期国王となるにふさわしい器量の持ち主で、本人もそれを十分に自覚していたように思う。
(他に好きな人がいて、私との結婚が嫌だった‥‥とか?それとも、誰にも打ち明けられない大きな悩みを抱えていたのかしら?)
色々な可能性を考えてはみるものの、どれも正解のような気もするし、全くの見当違いのようにも思える。
(私、フレッドのこと本当になにも知らないのだわ)
改めてその事実に思い至り、プリシラは愕然とした。幼い頃からよく知っていて、兄のように慕ってきた。婚約者となってからは彼の妻としてふさわしい女になれるよう努力もしてきたつもりだった。フレッドは誰にでも優しく、いつも明るかった。天性の人たらしで、誰もが彼のとりこになってしまう。
だけど、そんな彼にも人には見せない顔があったのかもしれない。プリシラはそれに気がつきもしなかった。こんな事態になっても、彼がなにを思っていたのかさっぱりわからないのだ。
「こんなんじゃ、婚約者失格よね。ごめんなさい、フレッド。どうか、無事でいて‥‥」
プリシラがそう小さく呟いたときだった。ベッド横の大きな出窓にカツン、カツンとなにか当たるような音が聞こえた。
(えっ!? もしかして‥‥フレッド!?)
プリシラは慌てて、窓を開け外を覗いた。暗闇の中に立っていたのはフレッドではなく別の人物だった。
「ディ、ディル!? 一体、どうして?」
「入るぞ」
「えっ‥‥なにを馬鹿なことを‥‥」
プリシラが止める間もなく、ディルはふわりと飛び跳ねると開け放たれた窓から部屋の中へと体を滑り込ませた。