次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
この三ヶ月、王都警備隊だけでは足りずに王国軍の一部もフレッド捜索に駆り出されていた。それにもかかわらず、手ががりさえも掴めていないという状況だった。宮廷貴族たちの間でも、フレッドはもう生きてはいないのでは‥‥という不穏な噂が流れはじめていた。

「大丈夫ですよ。フレッド殿下はきっと元気に戻っていらっしゃいます」
リズはそう言って励ましてくれたが、聡明な彼女のこと。事態がそう甘くはないことに、気がついているだろう。それはプリシラも同じだった。

(フレッドの意思なのか、誰かに連れ出されたのか。それはわからない。だけど、思いつきなどではなく綿密に計算された行動なのは間違いないわよね‥‥いったい、誰がなんのために?)

プリシラなりに色々考えてはみたものの、答えは出ない。フレッドがいなくなるなんて、この国にとって損失でしかないはずなのに。
どれだけ心配しても、フレッドは戻ってこない。自分にできることはなにもない。プリシラは無力感に苛まれていた。


「あ、プリシラ様。そろそろ時間ですわ」
「そうね。行かなくちゃ」

今日は父であるロベルト公爵と会う予定になっていた。結婚に向けてのあれこれが全て延期となっているいま、プリシラはミモザの宮で日々を無為に過ごしているだけだ。予定があることはそれだけで気が紛れるし、久しぶりに父と話ができるのも嬉しかった。

ミモザの宮は男子禁制のため、正殿内の一室でロベルト公爵とプリシラは面会した。プリシラは約束の時間より少し早く到着したのだが、どうやら公爵を待たせてしまったようだ。

「お父様。お待たせしてごめんなさい」
「いや、構わんよ。‥‥元気そうで、よかった」
公爵は愛娘を前に、嬉しそうに微笑んだ。が、公爵も今回の失踪騒ぎで心労が溜まっているのだろか。頬がこけ、少し痩せたように見える。
「お父様はなんだかお疲れのようだわ。無理はしないでね」
「あぁ、ありがとう」
「お母様は?ローザとアナは元気にしている?」
それからしばらくの間は何気ない雑談に
花を咲かせた。母とローザはプリシラがいなくなって寂しそうにしていること、飼っていた犬の出産。それから、なんとアナに縁談が持ち上がっているらしい。
「わ〜そうなの!でも、アナは面食いだから‥‥うまくいくといいけど」
プリシラはクスクスと笑った。
大好きなみんなが元気にしていることがわかって、久しぶりに心から笑顔になることができた。
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