次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
適当にはぐらかされるかと思いきや、ディルは意外にも真面目に答えてくれた。
「そうだな。初めて会ったときのことはよく覚えてる。あんまり綺麗だったから‥‥妖精か天使か、もしかしたら幽霊かもって思ったな」
「よ、妖精に天使‥‥ディルの口からそんなセリフが出てくるなんて、意外だわ。それとも私が知らないだけで、女性を口説くときはいつもそんなふうに褒めるの?」
プリシラはからかうつもりで言ったが、ディルは真面目な顔をくずさない。
「いや、本当にそう思ったんだ。まぁ、昔のことだし‥‥お前の全然知らない女性だよ」
(そうなんだ。ディルにそんな女性がいたなんて知らなかったな)
胸の奥がちくりと痛んだけれど、それには気がつかない振りをして‥‥ほんの少し勇気を出してみることにした。
マリー妃の話を聞いて、プリシラなりに色々考えてみたのだ。
プリシラはベッドに近づくと、仰向けに寝ころぶディルの隣に腰をおろした。
こちらを見上げたディルと目が合う。プリシラは彼を見つめたまま、口を開いた。

「あのね、ディル。その初恋の女性みたいに‥‥とは言わないわ。私たちの結婚は義務みたいなものだもの。でもね、私はディルとちゃんと夫婦になりたいの」
精いっぱいの気持ちを伝えたつもりだ。
フレッド失踪の謎にもディルとの関係にも、きちんと向き合いたい。逃げてばかりでは、一歩も前に進めない。どんな結末が待っていようとも受け入れる。やっとその決心ができたのだ。
ディルは受け入れてくれるだろうか。ドキドキしながら彼の返事を待っていると、ディルが小さく息を吐いた。
「悪いが‥‥もう少し具体的に言ってくれ。俺の理解力が足りてないのか?お前の考えてることがさっぱりわからん」



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