次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
ディルは無言のままプリシラを見つめていたが、しばらくして諦めたように目を伏せた。
「はぁ。まぁ、焦ることでもないか」
ディルはプリシラを抱きおこし、「話をするなら場所を変えるか」と顎で隣の部屋を示した。
「そうね。お茶を淹れるわ」
プリシラも立ち上がり、お茶の用意を始めた。思わぬ展開になった動揺をしずめるため。また、これからする話を整理するため。どちらの目的にも、お茶のリラックス作用が必要だった。
ふたりは隣室に移動し、ティーテーブルを挟んで向かい合わせに座った。
「わぁ、見て。綺麗ね」
東大陸産らしいそのお茶は、ガラス製のティーポットの中でゆっくりと白い花を咲かせた。ディルはそれを眺めながら、懐かしそうに言った。
「そういえば、マリー叔母上は昔から異国のものが好きだったな。東大陸は医療や学問がずっと進んでいるんだと、なぜか自分が自慢気な顔をしていた」
マリー妃らしいなとプリシラは思った。若い頃の彼女が楽しそうに話をするところが目に浮かぶようだ。
「東大陸かぁ‥‥うちのお父様はミレイア王国より優れた国はないってよく言ってるけど、世界は広いものね。もっともっと、驚くほど優れた文化のある国があっても不思議はないわよね」
もちろん、その逆、貧困に苦しむ国もあるのだろう。プリシラは幸運にも国内に嫁ぎ先を見つけてもらえたが、異国に嫁いでいれば、まったく別の人生があったのかもしれない。
そういえば、フレッドも異国が好きだったなとプリシラは思い出していた。
『もし、来世があるのなら学者になりたい。世界中をまわって、好きなことを学びたい』
そんなことをよく話してくれていた。もしかしたら、フレッドはその夢を叶えたくなったのだろうか‥‥。
まるでプリシラの心を読んだかのように、ディルもフレッドの話を始めた。
「あいつもそんな話が好きだったな。例えば、満月は吉兆と考える国もあれば凶兆と考える国もあるんだとか。そんな話を山ほど持ち出して、俺をなぐさめてくれた」
フレッドを思い出しているのだろうか。ディルの瞳は少し寂しげで、とても優しかった。
「はぁ。まぁ、焦ることでもないか」
ディルはプリシラを抱きおこし、「話をするなら場所を変えるか」と顎で隣の部屋を示した。
「そうね。お茶を淹れるわ」
プリシラも立ち上がり、お茶の用意を始めた。思わぬ展開になった動揺をしずめるため。また、これからする話を整理するため。どちらの目的にも、お茶のリラックス作用が必要だった。
ふたりは隣室に移動し、ティーテーブルを挟んで向かい合わせに座った。
「わぁ、見て。綺麗ね」
東大陸産らしいそのお茶は、ガラス製のティーポットの中でゆっくりと白い花を咲かせた。ディルはそれを眺めながら、懐かしそうに言った。
「そういえば、マリー叔母上は昔から異国のものが好きだったな。東大陸は医療や学問がずっと進んでいるんだと、なぜか自分が自慢気な顔をしていた」
マリー妃らしいなとプリシラは思った。若い頃の彼女が楽しそうに話をするところが目に浮かぶようだ。
「東大陸かぁ‥‥うちのお父様はミレイア王国より優れた国はないってよく言ってるけど、世界は広いものね。もっともっと、驚くほど優れた文化のある国があっても不思議はないわよね」
もちろん、その逆、貧困に苦しむ国もあるのだろう。プリシラは幸運にも国内に嫁ぎ先を見つけてもらえたが、異国に嫁いでいれば、まったく別の人生があったのかもしれない。
そういえば、フレッドも異国が好きだったなとプリシラは思い出していた。
『もし、来世があるのなら学者になりたい。世界中をまわって、好きなことを学びたい』
そんなことをよく話してくれていた。もしかしたら、フレッドはその夢を叶えたくなったのだろうか‥‥。
まるでプリシラの心を読んだかのように、ディルもフレッドの話を始めた。
「あいつもそんな話が好きだったな。例えば、満月は吉兆と考える国もあれば凶兆と考える国もあるんだとか。そんな話を山ほど持ち出して、俺をなぐさめてくれた」
フレッドを思い出しているのだろうか。ディルの瞳は少し寂しげで、とても優しかった。