次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
ディルが背負わされたくだらない予言の話だろう。
「なぐさめたんじゃないと思うわ。フレッドは本当に気にしてなかったのよ」
「なんでそう思う?」
「だって、私でもばかばかしいと思ってたもの。赤ちゃんのディルが火をつけたわけもないし、王都の大火なんて偶然でしかないわ。フレッドは私より賢いし、信じてなかったに決まってる」
きっぱりと言い切ったプリシラをディルは呆れたような顔で見て、それから薄く笑った。
「マリー叔母上やフレッドも変わり者だが、一番の変人はお前だったな。俺とは遊ぶなと散々言われたのに、懲りずに毎日顔を出してた」
そうだった。ディルとは最初から意気投合したわけではなかった。あのころのディルは自身の殻に閉じこもり、プリシラにも誰にもなかなか心を開こうとしなかった。でも、だからこそ、プリシラはディルの笑った顔をひとめ見てみたくて、どんなに拒絶されてもしつこく会いに行ったのだ。
(あのころの私は、たくましかったなぁ。あの強さをもう一度、取り戻せるかしら)
「懐かしいわね。フレッドはいつも忙しくしてたから。遊び相手にはディルがちょうど良かったのよ」
「昔から暇人で悪かったな」
昔よくそうしていたように、ディルはふんと鼻を鳴らした。
「そうだ、私の乳母を覚えてる? 」
「あぁ。顔を合わせるたびに野犬を追い払うような目で威嚇されたな」
「ローザが昔言ってたの。偉い人は伝説だの予言だの、目に見えないものを必要以上にありがたがるって。平民は明日の天気は明日にならなきゃわからないって、ちゃんと知ってるもんだって」
「どういう意味だ?」
「自分がフレッド王子派なのは、ディルが呪われた王子だからじゃない。素行が悪いから嫌いなだけだって」
彼女はそれしか言わなかった。けれど、プリシラはローザの言いたいことがよくわかった。
「民は目に見えるものを大切にする。ディルの予言なんて酒の肴程度にしか思ってないの。ディルが優れた為政者になって、国がより良くなれば、呪われた王子だなんて綺麗さっぱり忘れちゃうってことよ」
ディルは肩をすくめて、ぼやいた。
「フレッド以上の実力を示せってことか
‥‥お前の乳母は本気で俺を嫌ってるらしいな」
「なぐさめたんじゃないと思うわ。フレッドは本当に気にしてなかったのよ」
「なんでそう思う?」
「だって、私でもばかばかしいと思ってたもの。赤ちゃんのディルが火をつけたわけもないし、王都の大火なんて偶然でしかないわ。フレッドは私より賢いし、信じてなかったに決まってる」
きっぱりと言い切ったプリシラをディルは呆れたような顔で見て、それから薄く笑った。
「マリー叔母上やフレッドも変わり者だが、一番の変人はお前だったな。俺とは遊ぶなと散々言われたのに、懲りずに毎日顔を出してた」
そうだった。ディルとは最初から意気投合したわけではなかった。あのころのディルは自身の殻に閉じこもり、プリシラにも誰にもなかなか心を開こうとしなかった。でも、だからこそ、プリシラはディルの笑った顔をひとめ見てみたくて、どんなに拒絶されてもしつこく会いに行ったのだ。
(あのころの私は、たくましかったなぁ。あの強さをもう一度、取り戻せるかしら)
「懐かしいわね。フレッドはいつも忙しくしてたから。遊び相手にはディルがちょうど良かったのよ」
「昔から暇人で悪かったな」
昔よくそうしていたように、ディルはふんと鼻を鳴らした。
「そうだ、私の乳母を覚えてる? 」
「あぁ。顔を合わせるたびに野犬を追い払うような目で威嚇されたな」
「ローザが昔言ってたの。偉い人は伝説だの予言だの、目に見えないものを必要以上にありがたがるって。平民は明日の天気は明日にならなきゃわからないって、ちゃんと知ってるもんだって」
「どういう意味だ?」
「自分がフレッド王子派なのは、ディルが呪われた王子だからじゃない。素行が悪いから嫌いなだけだって」
彼女はそれしか言わなかった。けれど、プリシラはローザの言いたいことがよくわかった。
「民は目に見えるものを大切にする。ディルの予言なんて酒の肴程度にしか思ってないの。ディルが優れた為政者になって、国がより良くなれば、呪われた王子だなんて綺麗さっぱり忘れちゃうってことよ」
ディルは肩をすくめて、ぼやいた。
「フレッド以上の実力を示せってことか
‥‥お前の乳母は本気で俺を嫌ってるらしいな」