One of Them〜第一幕〜『下書き』





「いやぁ、実力調べてたんだけど申し分ないね!結構結構!!」

パチパチと拍手しながらコウは言う。

「最初から言えよ!ホントに敵だと思ったじゃねぇか!!」

「気づいてなかったのかよ」

「なんだとー!このやろう!!」

(仲悪いなぁ…。というか、こんな簡単に敵に侵入されたらこの国終わってるよ大地くん)

はぁ、とため息つくサヤにコウが近づく。


「いやぁ魔法は久しぶりに見たけどやっぱり凄いね。流石星月一族」

「……どーも」

サヤは複雑な表情でお礼を言うとコウと距離を取った。

「それで今回の訓練は体力テストならぬ実力テストだったそうですが、主に何を見てたんですか?」

「いや、戦場でどれだけ動けるかなぁと思ってね?ほら、アカデーメイアーで授業受けてもいざ敵が来ると怖気付く奴もいるからさ」

なるほど、とサヤは納得する。

確かにアカデーメイアーで習うのは知識と実技だけで実践なんて皆無。

(………それにしても、疲れた)

サヤはふーっと息をついてその場に倒れ込むように座る。

氷が溶け始めていて濡れるかもしれないという考えすらない。

「お疲れだね」

「まぁ、これでも結構集中してたんで……」

サヤは苦笑いする。

(2つの武器のコントロール、それに加えて後方からのサポート……そりゃ疲れるよ)


ポンポン、とコウはサヤの頭を撫でて「お疲れさん」と言った。



「……………」

「ん?どうかしたかい?」

「……いえ、頭撫でられたの久しぶりなんで驚いただけです」

唖然としながらサヤが言う。

「…………そうかい。じゃあこれからは沢山撫でてあげよう」

「子どもは嫌いなんじゃないですか?」

「部下は別だよ」

サヤは困ったような笑みを出して「ほどほどでお願いします」と言った。


「「やんのかあぁ!?」」

「………………」

「……………(汗。着替えてきまーす…」

今にも殴り合いをしそうな2人の声が訓練室に響いた時、コウからどす黒いオーラが出ており、サヤは逃げるように訓練室を出て行く。


着替え終わったサヤはボロボロになった2人を見てコウは怒らせるべきではないと悟った。




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