パーフェクト・インパーフェクト


「なに食べたい?」

「んん、なんかあったかいやつ~」


めずらしく声を上げて彼が笑った。

たまに、こうやって素っぽい感じで笑ってくれると、どうにもうれしくなってしまうよ。


「わかった、なんかあったかいやつな」


リクエストに応えて連れていってくれたカニ鍋は、最高においしかった。


すき焼きにするか悩んだけど、お正月だからカニにしてみたって。

よくバンドのみんなで来るんだってことも、いっしょに教えてくれた。


他愛もない話をするたびに、いっこずつ、少しずつ、彼のことを知っていけている。

これからこういうのが降り積もっていくんだと思うと、簡単に幸せな気持ちになってしまう。


そして同じくらい、もっともっと知りたいな、なんて、欲張りなことも思うよ。


時間の許す限りいっしょにいたい。

わたしのなかが彼で、彼のなかがわたしで、いっぱいになっちゃうくらいに。


だから会う前に、きょうもお泊まりしていいですか、と聞いたのはわたしのほうだ。


いいよって、悩むそぶりすら見せないで優しく言ってくれた。

こう見えてメチャクチャ緊張して聞いたからちょっと拍子抜けしちゃったけど。


今回はちゃんと事前に約束していたから着替えもろもろ、お泊まりグッズの用意もバッチリだ。

下着もいちばんお気に入りのかわいいのを持ってきた。

もう無敵。
いつでもオッケーです。

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