パーフェクト・インパーフェクト
なーんて言いつつ、シッカリそわそわしながらコートを脱いだら、コーヒーかお茶しかないはずのおうちで、オレンジジュースを出された。
そもそも最初に必ず飲み物が出てくる気遣いに感動する。
やっぱり育ちがいいのだろうと、勝手に想像を膨らませてしまう。
「なにが好きかわかんなくて」
ソファに座ったままぼけっとグラスを見つめるわたしの隣に、ホットコーヒーをいれた彼が静かに腰かけた。
「そういや、最初に飲み会したときオレンジ飲んでたなと思って。ほかに飲みたいのあったら置いとくけど、なにが好き?」
「そんな、とんでもない、お気遣いなく! オレンジジュース用意してくれただけでもう幸せすぎるのに……」
「こんなので幸せ感じられるんだ」
「だってわたしのために選んで買ってくれたのかなって思ったら!」
いつもみたいにくすくす笑って、「教えて」と甘い感じで言われた。
なんか妙にどきどきする。
ずるいよ。
わたしのほうが、あなたのこともっと知りたいのに。
「えっと、オレンジ以外だと……ストレートティーとココアが好きです」
甘いのばっかりでまたガキっぽかったかな。しまったな。
ささいな後悔をしながらちまちまとコップのフチにくちびるをぶつけ、濃い橙を吸いこむ。