パーフェクト・インパーフェクト
おかしな苦しさみたいなものと闘っていたら、いつのまにか視界が彼でいっぱいになっていた。
あわてて目を閉じる。
ついでに、肩にしがみついておく。
だって、こうしていないとこのままどこかへ飛んでいってしまいそうで。
触れるだけのチュウは、幾度もくり返しているうちに、だんだんとそうじゃなくなっていった。
ふいに下唇を甘噛みされる。
びっくりして思わず体が震えた。
そしたら次は、舌先で軽くなぞられた。
肩を掴んでいる手に力がこもる。
痛、と彼がちょっと笑いながら顔を離す。
しまった。
力かげん、間違えちゃった。
「しがみついてていいよ」
「ひあ……」
「キスから練習しよう」
「れ、れんしゅう」
「うん、ちょっとずつ」
こっちはこんなにガチガチに緊張しているというのに、彼は顔色も声色もいっさい変わらないでいる。
手慣れてないよ、なんて前に言っていたけど、それはやっぱり嘘だ。
「限界になったら教えて」
優しく言ってくれたのに、まるで食べられちゃうみたいなくちづけだった。
口のなかぜんぶなぞられて、くちびるをちゅうっと吸われて、どろどろの唾液を飲みこんで。
いっぱい時間をかけて、ゆっくり、それでも着実に深まるそれに、頭がぼんやりしてくる。
いつもしているはずの、息を吸ったり吐いたりすることさえあまりに困難で、そうしようとすれば変にうわずった声が、自分の意思とは関係なく漏れ出した。