パーフェクト・インパーフェクト
「え……ちょ待、え、ちょっ、待っ……」
「いまさら?」
「だってだ、だって、いきなりこんな、こん」
「もう遅いんじゃない?」
あまりのことにテンパってしゃべるのをやめてくれないくちびるを、ちょっと笑ったままのくちびるがそっと塞いでいく。
ゆっくりとした、やさしい、甘ったるい、キスだった。
決していやらしくない、触れるだけのそれに心臓が破裂しそうなのは、あまりに体感時間が長かったからだ。
「……ぷはっ、」
たまらず、数秒かけて少しずつ離れていったくちづけのあいだから酸素を吸いこむ。
「まだぜんぜん、終わってないよ」
親指で捲るように下唇に触られた。
自分でもよくわからないふうに背中がぞくぞくして、なんだか怖い。
「や……」
「嫌?」
小さく首を横に振った。
髪が枕をこする音が耳に響く。
「さ……いごまで、してほしいです」
消え入りそうな嘆願に、彼はなんにも言わなかった。
言葉を発するかわりにかすかに笑み、静かな動作で眼鏡を外す。
それを下から眺めているだけでもう、お腹の下のあたりがきゅうっと切なくなるの。