パーフェクト・インパーフェクト


本当に面食らった。


いままで見たことのないような、ほんの少しさみしげな、見ているこっちの胸が締めつけられてしまう、もの悲しい微笑み。


彼には間違いなく、胸にしまってある記憶があるのだ、と。

恋愛においては初心者すぎるわたしですら、一瞬でわかった。


わかって、しまった。


「……だれ?」


自分でも無意識のうちに問いかけていた。


「知らない人だよ」

「どのくらい、好きだったの?」

「もう忘れたよ」

「ねえ、わたしと……どっちが好き?」


答えは聞かなくてもきっとわかる。


「もう、過去のことだよ」


きっとそれは嘘じゃなくて、本当にぜんぶ過去のことで、すべて終わったことで、

でも、たぶん、そう簡単に割りきれることでもなくて。


そういう恋をしたことが、あるんだ。

あったんだ。


きっと、わたしと知り合う、ずっと前の時代に。

10代、20代前半、
いつなのかはわからないけど。


少なくとももっと若い、いまより幼かった彼は、わたしの知らない誰かと、本気の恋を、したんだ。

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