パーフェクト・インパーフェクト
「たしかにアンちゃんはカワイイけど」
リアは、おもむろに自分のポーチからアイシャドウのパレットを取り出し、チップで赤みの強いピンクをすくうと、こちらに体を寄せてきた。
目つぶって、という言葉に素直に従う。
優しい圧力で目尻を撫でられている。
「それだけじゃ足りないのがこの世界だよ。誰かの力を借りながら、うまいこといろんな人を利用しながら、いっしょにがんばろうね」
本当はモデルよりもメイクアップアーティストになるのが夢だったというリアは、メイクの腕がプロ級だ。
流行りにもかなり敏感だし、似合う色を分析したりするのも得意で、彼女に色を載せてもらうと、いつも別人みたいな仕上がりになる。
こんなにハッキリした赤が自分に似合うなんて知らなかった。
いつもより3歳くらい年上になれた気がしてうれしくて、じっと鏡を見つめていると、リアもうれしそうに笑った。
「アンちゃんって仕事以外のトコではほんとにただのカワイイ女の子だよね」
「またバカにしてるっ」
「かわいがってるのー!」
むぎゅっとされたら、わたしのまな板おっぱいが、リアのロケットおっぱいに押しやられた。
わたしよりも半年だけモデル歴が長く、歳もひとつだけ上のリアは、たまにこんなふうにお姉さんぶってくる。
アンちゃんはカワイイでちゅねーって、いきなり年下扱いされる。むかつく。
いちばんの親友で、いちばんのライバル。
リアにだけは敵わないからこそ、リアにだけは負けたくないな。
すごく大好きだけど、ずっとふたりいっしょにカメラの前で笑ってたいけど、いつかどこかでわたしのほうが頭ひとつ飛び出た存在になりたいと思っているのも本当。
リアは、わたしのこと、どんなふうに見てくれているんだろ。
同じ気持ちだったらすごくうれしくて、ほんのちょっと、焦っちゃうかもしれない。