パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


どうにも怖いものや、ちょっとした不安の種を見ないふりしていたら、毎日は意外なほど平和だった。


冷たい風がすっかり吹かなくなり、春の穏やかな気候を肌に感じるころになると、わたしはまた以前のように国茂家にも通うようになっていた。

雪夜との関係はやっぱり、いままで通り、というわけにはいかないけれど。


だけど、険悪というわけじゃない。

もしかしたら前よりも、少しだけ良くなっているかもしれない。


雪夜を選ばないときっぱり宣言したこと、そしてその理由を、雪夜はちゃんと受け止め、理解して、飲みこんでくれたみたい。

だからわたしも、告白をなかったことにしてほしい、とはもう言わないことにした。


自分の内側で育ててきた誰かを想う気持ち、その大切さは、わたしも恋をしているからよくわかる。

雪夜がわたしのことを好きだったとか、いまでもやっぱり信じられないけど、ぶつけてくれたんだからこっちも誠意をもって応えるべきだって、やっとわかったんだ。


そのことをちゃんと謝ったら、雪夜は、一生許さねーって般若の顔で言った。

死ぬほどむかついたあとで、通常運転なことに、本当に安心した。


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