パーフェクト・インパーフェクト


14歳のとき、右も左もわからず、なにも持たないで、モデルの世界に飛びこんだ。


圧倒的で絶対的な女の世界。

年齢関係なく、実力のあるコが生き残り、そうじゃないコは潰れていく、決して生易しくない場所。


わたしはどう贔屓目に見ても、へなちょこの新人だったよ。

潰せば簡単に潰れそうな、なんといってもつい最近までブスだったおかげで、自己肯定感も高くないし、オドオドした、モデルモドキみたいなやつだったと思う。


それに、わたしのバックにはママがいたから。


スタイリスト・上月ゆい子。


わたしははじめ、どこに行っても、どうしてもその“娘”として見られた。

コネだって言われたこともある。

実際、始まりはコネみたいなものだったから、そう言われても耳を塞いで小さくなるしかなかった。


向いてない、って、思った。


カメラに撮られる楽しさよりも、身を置いている環境の辛さのほうが、勝ってしまって。

そういうなかで、ふいに、リアと出会ったんだ。



『上月杏鈴ちゃんっていうの? かわいー! 友達になりたーい! てゆーかなろー!』



なんてまばゆい光を背負った存在なんだと、ひと目で憧れた。


屈託なく、へにゃりと笑った目。

きっと本当の言葉しか紡がない、素直なくちびる。

ためらいもなく差しだされた右手。


それなのに、カメラの前に立った彼女は、目を疑うほどのプロで。


レンズを見つめる様々の温度をした目。

笑ったり、色っぽくなったり、コロコロ表情を変える、ぽってりとしたくちびる。

指先まですべてを表現している手。


こういう存在になりたいって、ずっと、ずっと、憧れていた。

いつのまにか負けたくない存在になっていた。


最初に会った瞬間から、大好きな友達だった。

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