パーフェクト・インパーフェクト


「どれだけ飲んだらこうなるんだよ」


なだれこむように玄関に入り、その場でへたりこんだわたしを抱えて、彼がひとりごとみたいに言った。

怒っているんじゃなくてあきれている声。


それでも、アポなしの訪問を責めたてたりしないから、どうしても甘えてしまう。


「うー……きもちわるい……」

「気持ち悪い? 吐く?」

「やだ、吐くのこわい……吐けない、きもちわるい」

「ん、わかった。とりあえず中入って水飲もうな」


ソファに座らせてもらう。

クラゲみたいにぐでんと溶ける。

目が回っている。


ぐるぐるし続けている世界で、眼鏡の彼が心配そうにわたしの顔を覗きこんできた。


「水、飲める?」

「……ん」

「おいで。ゆっくりでいいから」


体勢を変えて、今度は彼の腕のなかで溶けながら、コップの水をちびちび飲んだ。


そういえば、さっき、日本酒もこういう飲み方をした。

ぜんぜんおいしくなかった。


「どれくらい飲んだの?」


グロッキーの髪を撫でながら彼が問いかける。

尋問ではなく質問の温度感だった。


ほっとする。


「いっぱい……」

「そっか」


飲みすぎてしまったこと、もっと叱られるかと思った。


だけど本当に優しいんだね。

男の人もいたんだよ。
全員、お酒が入っているんだよ。

そういう心配はしないの?


意味わかんない、自分勝手すぎる不満。

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