パーフェクト・インパーフェクト


「楽しくなっちゃった?」

「……ううん」

「楽しくなかった?」

「ううん……」


ダメだ。
駄々っ子が顔を出している。

イヤイヤと、なにを言われても、なにをされてもかぶりを振るわたしに、とうとう彼は優しく問いかけた。


「なにかあった?」


じわり、じわり、じわじわ、
加速しながら視界がぼやけていく。


「どうしたの?」


優しいから、叱らないから、いっぱい甘えてしまうんだよ。

彼に、はじめて好きだと言ってもらえたあの夜以来、なんだかめんどくさい女になってしまうことがうんと増えた気がする。


「リアがアメリカに行っちゃう……」


被害者ぶってぜんぶ話した。

彼は、それは寂しいねと、気づかわしげに、寄り添うみたいに、言ってくれた。


だけど――味方には、なってくれなかった。


「でも、夢を追いかけて単身アメリカに行くって、すごい勇気だと思うよ。たぶんかなり悩んだとも思う。応援しないとな」


なぜだかとても、裏切られた気分だった。


俊明さんも、リアの味方なの?

リアのほうが正しいと思うの?


だめ、お酒がまわりきっている。

正常な判断がぜんぜんできないよ。

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