パーフェクト・インパーフェクト
  ✧︎*。


もともと、モデルのお仕事は、単なるお小遣い稼ぎのつもりだった。


きっかけは、スタイリストをしているママを通じて、業界の人に誘われたこと。

そのときはなんとなくやってみようかなってくらいだったし、わたしをこの世界に引き入れてくれたカメラマンのゲンさんも、きっと同じ気持ちだったはず。


素敵なお洋服を着て、カメラをむけられて、みんなにカワイイって褒めてもらえることが、こんなに気持ちいいなんて想像もしてなかったんだもん。

おかげでただのお小遣い稼ぎが、いつのまにかほんとのお仕事になっちゃってた。



「ねえ杏鈴(あんり)、今月号の表紙もなかなかよく撮れてるんじゃない?」


弾むような声が降ってくるのと同時にテーブルの上に投げ出されたのは、来週発売のティーン向け雑誌。

“いまいちばん女子高生に読まれてる”なんてうたわれているのは、上月(こうづき)杏鈴が専属モデルをしているからだって、マネージャーのいけちゃんはいつも冗談っぽく言う。


「ありがと、いけちゃん。でもゲンさん、今回はクール系でいくって言ってたのに、結局おもいっきりカワイイ系じゃんね?」

「それは杏鈴の力量不足でしょ?」

「ちぇー、テキビシイ」

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