パーフェクト・インパーフェクト


「それにっ、酔っぱらいはリアだけですし!」


アキさんも楽しそうによくしゃべってはいるけど、あれが彼のフツウなんだろうし。

瀬名さんも弟さんも、ずっと飲み続けているのに顔色ひとつ変わらない。

皆川さんだって、会った瞬間と、なにも変わらない微笑みで。


「いや、俺もけっこう酔ってるよ」


その微笑みのまま、変わらない優しい声のまま、普段とまったく同じトーンで皆川さんは言った。

酔ってる……?
どこが?


「顔に出ないからわかりにくいってよく言われるけど」

「う、うそだあ……」

「ほんとほんと。そりゃ、こんなかわいー顔がずっと正面にあったら酔いもまわるだろ。ってね」


本当に酔っていらっしゃるのかもしれない、と、思った。


漆黒に濡れた目にじっと見つめられるとまばたきの仕方を忘れてしまう。

いままでどうやってまぶたを動かしていたんだっけ。


ていうか、いまのは、もしや。


「やっぱり俺が言うとジジくさいな」


やっぱりアキさんのセリフのまねっこだ!

だけど皆川さんに言われるとぜんぜん重みが違って、ジジくさいとかじゃなくて、なんというか無性に心臓がむずがゆい。

だって、かわいーって、ほんとみたいな顔して言ったもん。


「冗談はやめてください……」


もはや死ぬ思いで目線を逸らし、呼吸をして、数十秒ぶりのまばたきをした。


そんなことはおかまいなしの皆川さんはずっとくすくす笑っている。

からかわれているのか?

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